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米の値段はなぜここまで高くなるのか

 

先日、農水省が令和6年産主食用うるち米の昨年12月における相対取引価格・数量を発表しました。

全産地品種銘柄の加重平均は60kg税込み2万4665円となり過去最高となりました。

 

相対価格とはJA全農などの出荷団体と卸売業者との間で主食用米を取引する際の価格です。米の代表的な取引価格の指標の一つで農水省が米60kgあたりの価格を毎月発表しています。

 

今までの豊作・米余りの時代でしたらその価格がそのまま参考にされ、卸から小売、そして消費者へと売買がくりかえされてきました。毎年出来秋の際に発表される概算金価格は、農水省の発表する作況指数を基に(今年はこれくらいとれる予想なのでこのくらいの値段でどうでしょう)と話し合った結果出てきた金額です。相対価格は今までそれほど大きく変化することなくきていましたので、ならば大手卸などは年間必要な量を出来秋の値段で契約を済ませていたと思います。

当店もその年の稲刈りの前に小売店さん側に赴き、「今年はこれくらい農家さんと契約ができているのでこれくらい買っていただけないでしょうか?」と商談するのが常でした。

 

最近、YouTubeで農協さんから令和5年産米の精算金が振り込まれたが、あまりの安さにショックを受けていた動画があげられていましたが、これは出来秋の段階で卸と契約が終わっていたからだなと思いました。JAと農家は委託販売という形をとっており、すべて売った時点で経費を差し引き概算金より高ければ追加払いをする方法をとるからです。ただ取り扱う量の多さから精算には2年ほどかかると言われており、令和5年産は精算が早かったと言えると思います。

当店でも農家さんから「今年は儲かったろう」と言われましたが、契約も売渡も夏前に終わっていたため、まったく高騰の恩恵にはあずかれませんでした。逆にこんな急騰では消費者が困るだろうと精米の値段を据え置きにしてたのですが、わかってくれたものやら。

今回の高騰で儲かったのはその時点で在庫を持っていた大手の業者さんぐらいで、大冷害や大災害でもない限り在庫を持ち続けるのはなかなか度胸がいることなのです。

 

そして令和6年秋、夏からの高騰を引きずる形で相対価格が高値で発進しました。作況指数は平年並み、稲刈りが進めば価格も落ち着くだろう、そんな考えは10月初旬に吹っ飛びました。

各JAが独自で加算に動き、他の集荷業者も次々と加算していったのです。稲刈り途中で概算金の追加など今までなかったことでしたが、稲刈りが始まってみると等級はいいものの収量は思ったほど上がっておらず、これが集荷競争の始まりでした。当店もこんなに高く買ったはいいが、売れるのだろうかと不安をかかえていましたが、JAさんの集荷量は思った以上に伸びなかったのだと思います。

 

 

米の流通にはJA全農さんが行うものとは別に一般の集荷業者が売買する市中相場があります。

多くの卸さんや小売さんは各県の全農さんと契約することが多く、全農さんから必要な数量が確保できなかった場合は市中相場から確保せざるを得なく、需要が急増したことが今回の高騰を引き起こしている原因です。

一般消費者のみの需要でしたらこれほどにはならなかったかもしれませんが、大手コンビニや外食チェーンも同様ですので、値上げの発表が次々となのは納得できると思います。

今やインバウンドの消費はものすごいものがありますし、4月からは大阪万博と需要は減るどころか増える一方で2月からさらなる値上げが予定されています。

 

 国は肥料や農業資材のコストを米価に転嫁できていないこと、農家の収入を増やすことを理由に静観してきました。しかし、主食である米を市場経済にゆだねる怖さ、不安定さを露呈した今、コメ政策の柔軟性が問われている気がします。

先日農水省が米価安定のため備蓄米の放出を検討とのニュースがありましたが、予想では20万トン程度とのこと。市場価格の乱高下を招くことのないよう国にはよく方法を検討してほしいと願っています。